やるから立退けと云ふなら宜しうございませうが、田地の方は之が權利を取つて仕舞ふ、其代償がドの位かと云ふと實際の原價からしますと凡そ十五分の一にしか當らぬ、村と云ふものゝ原價、即ち現在に在る所の物に對する實價に比しますと云ふと、三十分の一に足らない位の支拂、斯樣なことで權利を取る、權利を取るが僅の家をやるからと云ふ所で皆釣込まれて田地を取られる、彼方でも此方でも詐僞して居るが、大きな詐僞だから到底人民に分るものでない、餘程能く出來て居ります、中々能く出來て居ります。

     △千五百萬圓のもの[#「千五百萬圓のもの」に丸傍点]

 之を親切に買上げるのは中々四十八萬兩位で出來る仕事でございませぬから、之を運動費として田地を買ふより先に人間の心自體を買收する方針で、買收丈で崩して仕舞つたから四十八萬圓で餘りある、之を誠實に買上げるには千五百萬圓を出しても多しとしない、假に千五百萬圓を以て賣拂つたと云へば富を爲すかと思ふが、谷中村を去つて他の原野を開くと千五百萬圓使つて今の谷中村丈のものが出來るか、出來ぬ、よし千五百萬圓のものを得ても人民の懷に得る所がなくなる、人民の懷に殘る金は一文もな
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