する、貯水池にして洪水の時此村へ洪水を入れるから外の村々が助かると云ふ、其口實も其通りならば宜しいが、其四隣縣より甚だ迷惑であると云ふことを内務省に申出てある、國會にも其書面が出て居る、又此谷中村と云ふ村は決して今迄水が這入つて作物が出來ないと云ふやうな村でないので、立派な村です、夫故に今日御出を願つて御覽になれば能く分ります、皆立派な麥畠です、風が吹けば塵が立つて外の地方と變ることはない、然るに一昨年の麥蒔き時分から、堤防を築かないから、麥蒔きをしてはいかぬと云つて人民に諭す縣廳の役人共です、昨年の夏は田植最中に大勢官吏が押込んで來て、調査と稱して村中を横行して人民を狂亂させた、當年の麥蒔き最中に麥を蒔かなければならぬのに麥を蒔いてはいかぬ、堤防は築かぬから蒔いても取れない、村役場で印を捺して村長の名を以て堤防は決して出來ないからと云つて毎戸に村へ振れると云ふ餘計な世話をして居る、當年麥を蒔かぬ畠がある、之は麥を蒔けよと云ふこそ縣廳の仕事である、申す迄もない、殊に栃木縣知事は栃木縣農會々長である、斯樣な譯で田植へ麥蒔きを妨害して今日堤防を築かせない、斯樣なことを斷言して且公文書を發し
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