聞いた方を御尤に思ふのは無理のない話である。此の樣子を知らぬ諸君が反對の議論を御信じになるのは據ない事でございまするが、是を取締るべき所の役所が被害地の人民よりも譯が分らない、被害地の人民が卑屈で今日まで聲を立てぬと言ふよりは、農商務の官吏等が聲を立てぬと云ふのは、幾百倍の卑屈と云ふべきか、無學と云ふべきか、實に此の農商務の官吏に向て言ふ言葉を知らぬのである――何と言ふたら形容し盡くせるか、まさかに蛆蟲とも言へず、馬鹿野郎とも言へぬ、何と云ふ名を付けたら宜いでございませうか。
諸君御覽なさい。關東の地面は平坦で地が廣い、實に目を遮るものが無い。此の沃野の良田數十里と云ふものが害されて、之を救ふものが今日政府の中に無いと云ふに至ては、如何でございます。諸君が常に忌む所の藩閥政府は、此良田をして沙漠たらしめたのである、沙漠となしつゝあるのである。此の綺麗な田畑淳朴な人民を、或は傷害し或は毒殺すると云ふのは藩閥政府のやり方で、藩閥政府が東北の人士を取扱ふこと斯の如く殘酷であるのでございます、如何ともすること能はざる有樣にして置いて、質問書が出たならば相當の答辯をして見るが宜しい。どう云ふ答
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