御話を致しましても、若し實際毒がひどいならば人民は既に竹槍蓆旗にも及びそうなものである、蓑笠を着けて御門訴をしそうなものであると思召しませうけれども、其れが色々な事情に依り、或は縣官郡吏を擒にし、或は地方で有名な者を擒にして壓制を致しますると云ふ次第なので、是は栃木群馬の被害人民ばかりでは無い、隨分中等以上の人間も五十人三十人の團體がございましても、其の頭の方を二三人買收されると、あとはおとなしくなると云ふことは、先づ帝國議會の中には居りませぬけれども、議會の門を出ると然う云ふことがどうも行はれて居る。側から見て居ると如何にも人間の頭では考の付かないことが幾らもございますから、此の被害人民中の悧巧さうな者を捕へてしまへば、あとは聲の立たないと云ふは極つた話。斯の如き事は申したくはございませぬけれども、被害人民の爲に之を辯解するが爲には少しく申さなければならない。
又たも一つは、有形的のものは能く人が氣付く、然れ共無形のものに至ては如何にも氣の付き方が遲かつたのでございまして、氣の付いた時にはもう事が過ぎて居た。彼の岐阜愛知の震災の如き、三陸の海嘯の如き、噴火山爆發の如きは、大抵な馬鹿
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