流れ出す。關東で一番有名で稠密な桐生足利といふ織物産地に此毒が流れて來る、どちらへ出ても五十里百里と云ふ道を經なければ海に落ちない。剩へ平坦の處へ出て良田を潰す。海の端に在る銅山と山間の溪流を經て海へ落ちるものと一緒になるもので無いから、初め此に採掘事業を起す時に能く調査しなければならぬ。一體此處に採掘事業を起させて製鑛所に非常な械械を据付けて亂暴することを許したのが、土臺間違つて居る。
斯の如く迚も言葉を以て盡されませぬが、それだけの害があるに、何故今日まで被害地方の人民は騷ぎ出さないか、何故に聲を上げて騷がないか、騷ぎが餘りに遲いではないか、又今日となつても聲が低いではないかと云ふ疑がなければならないのでございます。其に就きましては何處迄も被害地人民の有樣を申上げて大に之を辯解して置かなければならない。當路の人にも能く之を聽かして置かなければならない。被害地の巡廻に參つても、古河の番頭たる郡長の案内で、害の少ない上ツつらを見て歸つて來ると云ふ樣なやり方では迷惑するから、能く實驗の仕方も教へて置かうと思ひます。
渡良瀬川の下流にある被害地今日の境遇では、聲を出す能はざるに至つて居
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