雪の日
樋口一葉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)蝴蝶《(こてふ)》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)父祖累代|墳墓《みはか》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ](完)

 [#(…)]:訓点送り仮名
 (例)今一[#(ト)]勝負

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ちら/\
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 見渡すかぎり地は銀沙を敷きて、舞ふや蝴蝶《(こてふ)》の羽《(は)》そで軽く、枯木も春の六花《(りくくわ)》の眺めを、世にある人は歌にも詠み詩にも作り、月花に並べて称《(たた)》ゆらん浦山《(うらやま)》しさよ、あはれ忘れがたき昔しを思へば、降りに降る雪くちをしく悲しく、悔《(くい)》の八千度《(やちたび)》その甲斐もなけれど、勿躰《(もつたい)》なや父祖累代|墳墓《みはか》の地を捨てゝ、養育の恩ふかき伯母君にも背《(そむ)》き、我が名の珠に恥かしき今日《けふ》、親は瑕《(きず)》なかれとこそ名づけ給ひけめ、瓦に劣る世を経《(へ)》よとは思《(おぼ)》しも置かじを、
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