待《まち》とるらんと憐《あはれ》なり。嬉しきは月の夜の客人《まらうど》、つねは疎々《うと/\》しくなどある人の心安《こゝろやす》げに訪《と》ひ寄《より》たる、男にても嬉《うれ》しきを、まして女《をんな》の友《とも》にさる人あらば如何《いか》ばかり嬉しからん、みづから出《いづ》るに難《かた》からば文《ふみ》にてもおこせかし、歌よみがましきは憎きものなれどかゝる夜《よ》の一言《ひとこと》には身にしみて思ふ友とも成《なり》ぬべし。大路《おほぢ》ゆく辻占《つぢうら》うりのこゑ、汽車の笛《ふえ》の遠くひゞきたるも、何《なに》とはなしに魂《たましひ》あくがるゝ心地《こゝち》す。
底本:「日本の名随筆58 月」作品社
1987(昭和62)年8月25日第1刷発行
1989(平成1)年1月25日2刷
底本の親本:「一葉全集 後篇」博文館
1912(大正1)年6月
入力:葵
校正:もりみつじゅんじ
2000年11月6日公開
2005年6月28日修正
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