琴の音
樋口一葉
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)此処《(ここ)》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)今|一《(ひと)》たび
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「研のつくり」、第3水準1−84−17]処《(そこ)》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)もや/\
−−
(上)
空に月日のかはる光りなく、春さく花のゝどけさは浮世万人おなじかるべきを、梢のあらし此処《(ここ)》にばかり騒ぐか、あはれ罪なき身ひとつを枝葉ちりちりの不運に、むごや十四年が春秋を雨にうたれ風にふかれ、わづかに残る玉の緒の我れとくやしき境界にたゞよふ子あり。
母は此《(この)》子が四つの歳、みづから家を出でゝ我れ一人苦をのがれんとにもあらねど、かたむきゆく家運のかへし難きを知る実家の親々が、斯《(か)》く甲斐性《(かひしやう)》なき男に一生をまかせて、涙のうちに送らせん事いとほし、乳房の別れの愁《(つ)》ら
次へ
全9ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
樋口 一葉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング