雨の夜
樋口一葉

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)庭《には》

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)そよ/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

 庭《には》の芭蕉《ばせを》のいと高《たか》やかに延《の》びて、葉《は》は垣根《かきね》の上《うへ》やがて五尺《ごしやく》もこえつべし、今歳《ことし》はいかなれば斯《か》くいつまでも丈《たけ》のひくきなど言《い》ひてしを夏《なつ》の末《すゑ》つかた極《きは》めて暑《あつ》かりしに唯一日《たゞひとひ》ふつか、三日《みつか》とも数《かぞ》へずして驚《おどろ》くばかりに成《なり》ぬ、秋《あき》かぜ少《すこ》しそよ/\とすれば端《はし》のかたより果敢《はか》なげに破《やぶ》れて風情次第《ふぜいしだい》に淋《さび》しくなるほど雨《あめ》の夜《よ》の音《おと》なひこれこそは哀《あは》れなれ、こまかき雨《あめ》ははら/\と音《おと》して草村《くさむら》がくれ鳴《なく》こほろぎのふしをも乱《みだ》さず、風一《かぜひと》しきり颯《さつ》と降《ふり》くるは彼《か》の葉《は》にばかり懸
次へ
全3ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
樋口 一葉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング