らぬか云《い》ひ出《だ》して爪《つま》はじきされなん恥《はづ》かしさには再《ふたゝ》び合《あは》す顔《かほ》もあらじ妹《いもと》と思《おぼ》せばこそ隔《へだ》てもなく愛《あい》し給《たま》ふなれ終《つひ》のよるべと定《さだ》めんにいかなる人《ひと》をとか望《のぞ》み給《たま》ふらんそは又《また》道理《だうり》なり君様《きみさま》が妻《つま》と呼《よ》ばれん人《ひと》姿《すがた》は天《あめ》が下《した》の美《び》を尽《つく》して糸竹《いとたけ》文芸《ぶんげい》備《そな》はりたるをこそならべて見《み》たしと我《われ》すら思《おも》ふに御自身《ごじしん》は尚《なほ》なるべし及《およ》ぶまじきこと打出《うちだ》して年頃《としごろ》の中《なか》うとくもならば何《なに》とせん夫《それ》こそは悲《かな》しかるべきを思《おも》ふまじ/\他《あだ》し心《こゝろ》なく兄様《あにさま》と親《した》しまんによも憎《にく》みはし給《たま》はじよそながらも優《やさ》しきお詞《ことば》きくばかりがせめてもぞといさぎよく断念《あきら》めながら聞《き》かず顔《がほ》の涙《なみだ》頬《ほゝ》につたひて思案《しあん》のより
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