糸《いと》あとに戻《も》どりぬさりとては其《そ》のおやさしきが恨《うら》みぞかし一向《ひたすら》につらからばさてもやまんを忘《わす》られぬは我身《わがみ》の罪《つみ》か人《ひと》の咎《とが》か思《おも》へば憎《にく》きは君様《きみさま》なりお声《こゑ》聞《き》くもいや御姿《おすがた》見《み》るもいや見《み》れば聞《き》けば増《ま》さる思《おも》ひによしなき胸《むね》をもこがすなる勿体《もつたい》なけれど何事《なにごと》まれお腹立《はらだ》ちて足踏《あしぶみ》ふつになさらずは我《わ》れも更《さ》らに参《まゐ》るまじ願《ねが》ふもつらけれど火水《ひみづ》ほど中《なか》わろくならばなか/\に心安《こゝろやす》かるべしよし今日《けふ》よりはお目《め》にもかゝらじものもいはじお気《き》に障《さは》らばそれが本望《ほんまう》ぞとて膝《ひざ》につきつめし曲尺《ものさし》ゆるめると共《とも》に隣《となり》の声《こゑ》を其《そ》の人《ひと》と聞《き》けば決心《けつしん》ゆら/\として今《いま》までは何《なに》を思《おも》ひつる身《み》ぞ逢《あ》ひたしの心《こゝろ》一途《いちづ》になりぬさりながら心《こゝ
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