い》でずしてうつむけば隠《かく》し給《たま》ふは隔《へだ》てがまし大方《おほかた》は見《み》て知《し》りぬ誰《た》れゆゑの恋《こひ》ぞうら山《やま》しと憎《に》くや知《し》らず顔《がほ》のかこち事《ごと》余《よ》の人《ひと》恋《こ》ふるほどならば思《おも》ひに身《み》の痩《や》せもせじ御覧《ごらん》ぜよやとさし出《だ》す手《て》を軽《かろ》く押《おさ》へてにこやかにさらば誰《たれ》をと問《と》はるゝに答《こた》へんとすれば暁《あかつき》の鐘《かね》枕《まくら》にひびきて覚《さ》むる外《ほか》なき思《おも》ひ寐《ね》の夢《ゆめ》鳥《とり》がねつらきはきぬ/″\の空《そら》のみかは惜《を》しかりし名残《なごり》に心地《こゝち》常《つね》ならず今朝《けさ》は何《なん》とせしぞ顔色《かほいろ》わろしと尋《たづ》ぬる母《はゝ》はその事《こと》さらに知《し》るべきならねど面《かほ》赤《あから》むも心苦《こゝろぐる》し昼《ひる》は手《て》ずさびの針仕事《はりしごと》にみだれその乱《みだ》るゝ心《こゝろ》縫《ぬ》ひとゞめて今《いま》は何事《なにごと》も思《おも》はじ思《おも》ひてなるべき恋《こひ》かあ
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