み》にも似合《にあ》はない。でも癒《よ》くなる筈《はず》がありませんものと果敢《はか》なげに云《い》ひて打《う》ちまもる睫《まぶた》に涙《なみだ》は溢《あふ》れたり馬鹿《ばか》な事《こと》をと口《くち》には云《い》へどむづかしかるべしとは十指《じつし》のさす処《ところ》あはれや一日《ひとひ》ばかりの程《ほど》に痩《や》せも痩《や》せたり片靨《かたゑくぼ》あいらしかりし頬《ほう》の肉《にく》いたく落《お》ちて白《しろ》きおもてはいとゞ透《す》き通《とほ》る程《ほど》に散《ち》りかかる幾筋《いくすぢ》の黒髪《くろかみ》緑《みどり》は元《もと》の緑《みどり》ながら油《あぶら》けもなきいた/\しさよ我《われ》ならぬ人《ひと》見《み》るとても誰《たれ》かは腸《はらわた》断《た》えざらん限《か》ぎりなき心《こゝろ》のみだれ忍艸《しのぶぐさ》小紋《こもん》のなへたる衣《きぬ》きて薄《うす》くれなゐのしごき帯《おび》前に結びたる姿《(すが)た》今《いま》幾日《いくひ》見《み》らるべきものぞ年頃《としごろ》日頃《ひごろ》片時《かたとき》はなるゝ間《ひま》なく睦《むつ》み合《あ》ひし中《うち》になど底《そ
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