ゆく雲
樋口一葉

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)酒折《さかをり》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)馬車|腕車《くるま》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「研のつくり」、第3水準1−84−17]處《そこ》

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)もと/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

       上

 酒折《さかをり》の宮、山梨の岡、鹽山、裂石《さけいし》、さし手の名も都人《こゝびと》の耳に聞きなれぬは、小佛《こぼとけ》さゝ子《ご》の難處を越して猿橋のながれに眩《めくる》めき、鶴瀬《つるせ》、駒飼《こまかひ》見るほどの里もなきに、勝沼の町とても東京《こゝ》にての場末ぞかし、甲府は流石に大厦《たいか》高樓、躑躅《つゝじ》が崎の城跡など見る處のありとは言へど、汽車の便りよき頃にならば知らず、こと更の馬車|腕車《くるま》に一晝夜をゆられて、いざ惠林寺《ゑりんじ》の櫻見にと
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