にごりえ
樋口一葉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)信《しん》さん
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)卷紙二|尋《ひろ》も
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)やんちや[#「やんちや」に傍点]なれば
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)とん/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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一
おい木村さん信《しん》さん寄つてお出よ、お寄りといつたら寄つても宜いではないか、又素通りで二葉《ふたば》やへ行く氣だらう、押かけて行つて引ずつて來るからさう思ひな、ほんとにお湯《ぶう》なら歸りに屹度《きつと》よつてお呉れよ、嘘つ吐きだから何を言ふか知れやしないと店先に立つて馴染らしき突かけ下駄の男をとらへて小言をいふやうな物の言ひぶり、腹も立たずか言譯しながら後刻《のち》に後刻にと行過るあとを、一寸舌打しながら見送つて後にも無いもんだ來る氣もない癖に、本當に女房もちに成つては仕方がないねと店に向つて閾《しきゐ》をまたぎながら一人言をいへば、高ちやん大分御述懷だね、
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