までは御軒《おんのき》のものなるを、いかにしてさは聞き給ひけん、物ぐるほしくもおはしますかな」といよ/\笑ふに、「さにはあるまじ。いかで山がらすをさはおもふべき。あの鳴《なく》ね聞き給へ、よもあやまらじ」と不審《いぶ》かしうなりて言へば、「月夜に寝ほうけて鳴出《なきいづ》る時は常の声とも異《こと》なりぬべし。今のなく音《ね》は何かは異ならん。あれ見給へ、飛びゆく姿もさやかなるを」と指さゝれて、あはれこの子規《ほとゝぎす》いつも初音《はつね》をなく物になりぬ。覚《さ》めずは夢のをかしからましを。



底本:「全集樋口一葉 第二巻 小説編二〈復刻版〉」小学館
   1979(昭和54)年10月1日第1版第1刷発行
   1996(平成8)年11月10日復刻版第1刷発行
入力:もりみつじゅんじ
校正:浅原庸子
2003年3月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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