いざ連歌よまん下の句出し給へと人々いふ さらばいかにもつけ給へ上の句からにこそとて「つらきうきよのおもしろき哉)とかきてなげ侍ればあはれにくき出しざまやと師の君わらふ 田中のみの子上の句かきて出す「月花もおもひすてゝは中々に) よみ得たりとて人々響動みをつくりぬ 折から伊藤の與助ぬし坐にあり 句作にかしらをなやまし居るいとをかしくてみの子ぬしふところ紙に書きつくるを見れば「いさをゝたてよ大君の爲とありし こは近に征清の軍にしたがはん人なればなめり こゝとかしこといとあはひの隔たれば大聲にて物いはんもうし 其よしかきてよとみの子ぬしいふ 我れかきつけてなげやれば師の君取りてたかくうとふ
[#ここから2字下げ]
この一句田中のみの子より參らす いくさの陣にはせむかふて大功をたて給はん君の連歌のよみかけにうしろを見せ給はゞ長く卑怯の名や得給はん たゞすみやかに/\とてなん
[#ここで字下げ終わり]
されどもえよみやらでかしらをかゝへぬ

物へもてゆくに筆のつか長くていと侘し少し切りてなどいふ人あれど大方釣合して作りたる物なれば切りてはつかのいと輕く手ごゝろかはるとさる人仰せられぬ さる時は切
前へ 次へ
全11ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
樋口 一葉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング