うつせみ
樋口一葉
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)疵《きず》にして
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)他には申|旨《むね》のなき
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+匡」、第3水準1−88−81]《まぶた》を
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ごた/\して
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
(一)
家の間數は三疊敷の玄關までを入れて五間、手狹なれども北南吹とほしの風入りよく、庭は廣々として植込の木立も茂ければ、夏の住居にうつてつけと見えて、場處も小石川の植物園にちかく物靜なれば、少しの不便を疵《きず》にして他には申|旨《むね》のなき貸家ありけり、門の柱に札をはりしより大凡《おほよそ》三月ごしにも成けれど、いまだに住人《すみて》のさだまらで、主なき門の柳のいと、空しくなびくも淋しかりき、家は何處までも奇麗にて見こみの好ければ、日のうちには二人三人の拜見を
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