い。そして九州一圓は市村六之丞、紀州を主として大和・河内・和泉は小林六太夫、中國地方は淡路源之丞、伊豫を中心にして阿波・讃岐・攝津等は上村源之丞の地盤と云ふ風になつてゐる。尚中國地方などでは座に屬さずに路傍で一人遣ひの單純な操を演じて廻る門附《かどづけ》の人形操の獨立した一團が相當に存在してゐる。
右のうちで最も操趣味の盛んなのは伊豫である。元日から暮の大晦日まで毎年々々繰返して一年中巡業することが出來るのは伊豫だけであると云はれてゐる。伊豫では古くから一年の各月をそれぞれ群町村に割當てて巡業日を豫定してある。殊に冬期の見物の爲には芝居炬燵と云ふ特種な保温具まで出來てゐる位である。之れに續いて盛んだつたのは紀伊で、小林六太夫と紀州との關係は相當に深いものがあつたらしく、紀州侯から座元に三葉葵の定紋を許されてゐたと云ふ。即ち此の人形座は紀伊領一圓には有利な特權を得てゐたのである。
然しながら近來各座共床の方が手薄になつて、座附太夫の他に追抱太夫と云ふ制度を設けて、臨時に太夫を傭ふことになつてゐる。和歌山の淨曲家千田梅家軒氏の談に依ると、九州巡業の市村六之丞の方では一年契約で一日最低九
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