有のものである。只そこに永遠の像に到達すべき間の距離がある。が然し必らずそれは最後には何人も到達し得るであろう。
 かくて人形芝居の主人公は童話の世界へ旅立つであろう。この旅は現在の刹那から永遠の現在への距離を時間的に見て、之れを空間的な距離に置変えたのであり、主人公が旅中に出会う様々の不幸や障害はこの非時間的距離を外的事件の障害に変形したものである。
 それは象形文字《イエログリイフ》で書かれた処の人間生活史と見るとことが出来るであろう。

     *

 人形は知識を得た人間に貶しめられ、権威と勢力を奪われ、沈黙のなかにとじこめられて、哀れにも小さく退化した巨人《チタン》族の後裔である。



底本:「日本の名随筆 別巻81 人形」作品社
   1997(平成9)年11月25日第1刷発行
底本の親本:「竹内勝太郎全集 第二巻 芸術論・宗教論」思潮社
   1968(昭和43)年1月
入力:浦山敦子
校正:noriko saito
2008年5月24日作成
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