ん」との規定であったが、予約者奪取の競争上、取次店からは予約金を取らない事にしたので、中途の破約も随意と成り、残本の返送も当然と成り、予約出版と云う事実は全く無くなって了った、そこで一般読書子の方へは規定無視の念を普及せしめ、これがため、従来小資本出版屋の便宜手段であった予約出版は行われない事に成った
斯く旧慣破壊で他へ迷惑を及ぼしたのみでなく、自己が「予約会員にのみ頒つもので一冊売りは断じて致しません」と書いた事も反古にされ、今は何処の本屋にても一冊売りをする事になって居る、奴畜生メ《どちくしょうめ》
普通出版界に波及せし悪影響
「出版界に危機をもたらした円本」と云った人もある如く、大量生産で資本主義の弊を遺憾なく暴露した円本出版は、実に普通の出版界に危機をもたらしつつあるのである、自衛上已むを得ぬとして、同じ円本出版に変じた書肆も多いが、此円本流行が永く継続すれば、出版界は共倒れの全滅になるかも知れない
盲目千人目明一人の世の中、カサ高いヤクザ本を見て「これが一円とはヤスイ物、従来二円三円で買って居た本よりも部厚《ぶあつ》で立派だ、これを一円で売っても儲かるものとすれば、本という
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