て可なりである
次に利己一遍の有象無象が、自衛上の已むなきに出たとしても、発頭者の無謀をマネて其罪悪を拡大し、其害毒を増大せしめたのは、共に不埒の暴挙である、其暴挙であるが故に、悪竦の手段を講ぜねばならず、卑劣の窮策を廻らさねばならぬハメに陥りやがて悲哀を招き煩悶を来たして、終には没落するに到るのである、これ皆無謀行為の自業自得、考慮なき暴挙の悪因悪果として、当然の成行であらねばならぬ、以下条を追って其実証実例を列記する

附記 大量生産の円本出版其事が無謀の暴挙であるばかりでなく、円本出版屋の手段に就ても種々の暴挙がある、確乎たる収入の予算もないに、諸新聞へ大広告文を掲載せしめて其代料を支払わず、紙屋印刷屋へ注文した書冊の代料を支払わず、或は、他人の著作権を侵害して円本の材料とするなど、彼等の不徳行為は※[#「※」は「てへん+婁」、47−12]指に遑なしで、其ため強硬の談判を受けて逃げ隠れるもあり、示談金を出してアヤマルのも多い、諸新聞紙上に掲出された岩波書店の被告事件などは表沙汰の一例に過ぎない
其一例とは、往年大倉書店が故夏目漱石と著作権共有の契約で出版した『吾輩は猫である』を、
前へ 次へ
全46ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮武 外骨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング