盲者ばかりが残って居るので、迚も売れませぬと云う返事です、此円本のゾッキは実にアテ外れでありました、これに懲り/\して、今後円本のゾッキ買は断じてやらないつもりです、三万円の内、少しばかり売っただけで、全くの背負込みをドーすればよいかと、頭脳を痛めていますが、妙薬更になしです」云々
という聴くも気の毒の悲哀談、次は乙のゾッキ屋主人
「ワタクシ方は、一円本の残本十七万冊を一冊十二銭の割で二万円余に買取りました、トコロが、一から四までの揃いとか、一から六までの揃いとか云うのは、割安ですから皆売れましたが、アトがサッパリ売れませぬ、ハモノは殆ど買人なしです、其ハモノが多いので、如何にすればよいかと心配していますが、一向に好い智慧も出ませぬ、………ドーしてハモノが多いかと申すと、残本のゾッキですから、一巻は六千部、二巻は八千部、三巻は四万二千部、四巻はタッタ三百部、一篇は二百五十、二篇は二万六千、三篇は三万三千、四篇は百七八十、五篇は八百二十、六篇は二百八十というように、印刷高の激減と破約者の多少によって、残本数に大差違があるのです、揃い物は二百か三百に過ぎませんから売れたのですが、ハモノはそ
前へ
次へ
全46ページ中28ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮武 外骨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング