行く
鳥のやうに早く、姿も見せず歌つてゆく
私はあの聲が好きだ。
あの姿が好きだ。
[#地から1字上げ](一九一六、一二)
蘇生の思ひ
冬になるとよくこんな晩がある。
空が曇つて何となく悲しい壓迫を人が感じる
凡てのものが火が消えた樣にしづまり
遠く潮の引いたやうな空の感じがする。
自然が何か計畫をして居る爲めに遠くの方へ
そこへ力が皆んな行つてしまつたやうな氣がする
用も無いのに町へ出て見てもどこにも活氣が無い
家々は白く氣味の惡い氣の拔けた恰好をして居る。
どこか遠くの方で道路を工事する
大勢の人間の掛聲が聞えるそれにも力が無い
どうする事も出來ない寂寞を感じる。
家へ歸ると出し拔けに友達がたづねて來る。
何かもの足りなかつたのはこの友を待つて居たのだと思はせるやうに
然し一寸驚く。やつとわかる。
友も誰か來るのを待ちくたびれて出て來たと云ふ風だ。
淋しい泣きつくやうな氣難しい憂鬱な顏をして居る。
かゝる時の嬉しさ、蘇生した思ひがする
自分達は外の事を忘れてしまつた
打ちくつろいで熱心に文學を話す。心の中には火花の散る思ひ。
かくて友を送つて外へ出て見ると
天氣はすつかり變
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