を殺して三人を見守つた。
どんよりした白い雲も動かず、月もその間から顏を出して、
如何なる事かと眺めて居た。
然うして居る事が十分餘り
母親は聞えない位の吐息をついて、默つて歩き出した。
小供達もおとなしくそれに從つて、寒い町を三人は歩み去つた。
もう買へない餅の事は思は無い樣に、
やつと空氣は樂々出來た。
月も雲も動き初めた。然うして凡てが移り動き、過ぎ去つた。
人通りの無い町で、それを見て居た人は誰もなかつた。場末の町は永遠の沈默にしづんで居た。
神だけはきつとそれを御覽になつたらう
あの靜かに歩み去つた三人は
神のおつかはしになつた女と小供ではなかつたらうか
氣高い美くしい心の母と二人のおとなしい天使ではなからうか。
それとも大晦日の夜も遲く、人々が寢鎭つてから
人目を忍んで、買物に出た貧しい人の母と子だつたらうか。
[#地から1字上げ](一九一六、一二、三一夜)
[#地から1字上げ](以下五篇、生命の川所載)

  夕刊賣

十一月のびつしりと凍えた夜
街の四辻に女は新聞を賣る
彼女の脊中には三つ位の小供が掻卷にくるまつて、
小さな頭のうしろだけ露はに晒し出して、
顏を脊中にう
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