切符を與へてもいゝ
子供へ菓子か蜜柑位與へる金は五六錢ある
金を與へるのが問題ではない
共力する事が出來ればいゝ
彼女の爲めに働いて遣る事が出來ればいゝ
あゝ友達と二人で歩いて居たらば
きつと心を合はして如何うとか出來る
電車が來た、自分は迷つた
紫色をした一羽の鳩が電車道の敷石へとび下りて歩いた。
鳩が彼女の方へ飛んだらば引返さう
鳩はどつちつかずの屋根へ飛び上つた
自分は人に紛れて電車へ乘つた。
幸福な人は青々と滿ち溢れてゐる。
如何うして多くの幸福が、不幸な人を生むのか。
[#地から1字上げ](十二月一日)
樹木
北風が止んで夕日の傾く空に
靜かに大きな樹は沈んでゆく
難破船の最後のやうに
枝を開いた樹は妙にゆる/\目のまはるやうに
天體と共に傾いて行く、大きな渦の中に沈んでゆく。
靜かに、光りを加減し乍ら
自分は海上にたゞよふ漂泊者のやうに
涙をためて汝を見送る
靄に包まれて汝の沈み果てるまで
日に別れて行く汝の姿は悲壯だ。
日は沒し、汝も急に沈む。
然し月夜は再び汝の姿をもつて來た。
汝は優しい姿を保つて海底に見棄てられてゐる。
早くも光りの鱗屑の類ひは夥しく群れ來
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