迷つてゐる。
原の隅へ女の子がふくらんだうしろ姿を見せて家へ飛んで行く。
自分は妻と子供に別れて散歩に行く
電車に乘る。まるですいてゐる。
自分の前には厚着した上に水色の襟卷をした老婆が暖いので
供も連れずに遠くへ出掛けると見える。
車掌に乘替を切らしてゐる。
綺麗な可愛ゆい聲だ。
電車は坂を下りて行く
向ふから一杯荷馬車や荷車が高々と下りて來て通り過ぎる。
馭者臺に小僧が同乘して嬉し相に見渡して居る
學校がへりの袴をつけて少女が
思ひ/\の色のふろしき包みを片手の上にきちやんと載せて、
二三人づゝ連れ立つて來る
何か饒舌つてゐる。
みんな赤い顏を前に集めて覗き合ひ乍ら話して來る。
道行く人の眼はみんな同じ方向を向いてゐる。
黄ろい菊の束をもつた少女も通る。
黒いマントに白のゲートルの脛の長い學生も通る。
みんな青々として通る。力をもつて高々と通る。
歩いて行く者は凡て美しいと思ふ。
地面は之等の人や馬や車を載せてゆるく地辷りして來る。
電車は馬のやうに一氣に坂をのぼり切る。
坂の上の火藥庫の番兵も明るい顏をしてゐる
呑氣さうに見える。御じぎをして人が入つて行く。
番兵は見知り合ひと見
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