て笑つて居た。
例へやうもない可愛ゆいおとなしい顏よ
すつかりいゝ氣持になつてゐる滿足顏だ。
自分が笑へば、靜かに笑ふ、その眼の光り、
りかう相な默つた表情。いゝところで出會つた。
さて又自分は妻と話のつゞきをする。
もう子供の事は忘れて、
話が絶えて又思ひ出して見れば
靜かに笑つて二人の話を聞いてゐる
母の顏のうしろの一寸氣がつかない小さな顏よ、
葉蔭の花か果物のやうな
滿足しきつたぜい澤な顏、
可愛ゆい、小さな鋭い顏、
ではさよなら、行つて御いで
さよなら、笑つて居ますよ。
[#地から1字上げ](十一月三日)

  或る朝の印象

あゝ朝
どの家々もがら明きのやうに靜かだ
皆んな何處かへ行つて仕舞つたのでは無いか
亂雜に家々ばかりが蜘蛛の居ない巣のやうに
澤山空に向つて淋しく竝んで居る。
餘りに明るい光りが暗さを生むやうに
淋しいうつろな家々の近所で
勇しい雀ばかりが啼いてゐる。
ゆつくりと、この朝の靜かさに驚いたやうにつゝましく啼いてゐる。
だん/\啼く音が殖えてゆく。
勢ひも増して行く、羨しくなる程恐れを知ら無いで雀は啼いてゐる
ついと一羽が、
高い目のまはるやうな高い電線に飛
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