數に遣つて來る。
勢のいゝその音は絶える間もなく、賑やかに密集して來る。
人聲は一つも聞え無い。何千何萬と知れ無い車の輪の、
飾り氣の無い、元氣な單調な音許り
天から繰り出して來る。
遠く遠くから、カラ/\カラ/\調面白く、
よく廻りあとからあとから空に漲り、
地に觸れて跳ねかへり一杯にひろがつて來る。夥しい木の輪の音、
夜もすがら
眠れる人々の上に天使が舞ひ下りて、休みもせず
舞ひつ踊りつ煩さい位耳を離れず、幸福な歌をうたふやうに。

氣が附けばます/\音は元氣づき、密集團となり
朝の來るのに間に合はせる爲め
忙しなく天の戸を皆んな繰り出した音のやうに
喜びに滿ちた勇しい同じ小さな木の輪の音が
恐ろしいやうにやつて來る。
一つ一つ夥しい星の中から生れてぬけ出して來る。
もう餘程通り過ぎて仕舞つたやうに
初めから終りまで同じ音で此世へやつて來る。

曉方になるとその音は
天使の見離した夢のやうに消えて仕舞ふ。
天と地とのつなぎをへだてゝしまふ
何處かへ蜂が巣を替へて仕舞つた跡のやうに
一つも聞えなくなる。
鋭敏になつた頭には今度は地上のあらゆる音を聞く
馬鹿らしい夜烏の自動車の浮いた音
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