一致するものが甚だ多いのであって、これと異なるものは「ち」「つ」「ぢ」「づ」およびハ行の仮名に相当するものであり、サ行およびザ行の仮名にあたるものも、或るは現代の発音と違っていたかも知れない。当時の音で、現代普通に用いられないものはヤ行のエにあたるye、ワ行の「ゐ」「ゑ」「を」にあたる<wi><we><wo>であり、「ぢ」「づ」と「じ」「ず」とは、現代語では普通発音の区別がないが、奈良朝には、おのおの別々の音であった。「き」「け」「こ」「そ」「と」「の」「ひ」「へ」「み」「め」「よ」「ろ」および「ぎ」「げ」「ご」「ぞ」「ど」「び」「べ」の十九の仮名の一つ一つにあたるそれぞれ二つの音は、一つは現代語におけると同じ音またはこれに近い音であるが(ただし「ひ」「へ」の子音は現代語と違い、「そ」「ぞ」の子音も現代語とちがっていたかも知れない)、他の一つは、これに近いがそれとは違った(現代の標準語には普通に用いられない)音であった。
以上のように奈良朝においては、現代よりは音の種類が多かったのであるが、しかし、それはいずれも短音に属するもので、「ソー」「モー」のような長音に属するものはない。また
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