れる。
ザ行の仮名にあたる諸音の子音は、サ行にあたる諸音と同じ子音の有声音であろうが、当時の発音は、その清音と同様に未だ決定し難い。ずっと古くは最初にd音を帯びていたかとおもわれるが、奈良朝にはあるいはshの有声音j(音声記号では〔※[#「※」は発音記号。「ろ」に似た形のもの、143−5]〕)であったかも知れない。
ダ行の仮名にあたる諸音は、現今のダの子音と同じdであった。ただし「ぢ」「づ」は、現今の発音とは異なり、「ぢ」はdi(英語独逸語の発音。仮名はディ)、「づ」はdu(独逸語の発音。仮名はドゥ)であったと認められる。
バ行の仮名にあたる諸音の子音は、現代と同じくbであった。
次に、子音の次に母音がついて成立つ諸音における母音について見るに、奈良朝時代の諸音のうち、その一音が後世の一つの仮名にあたるものにおいては、ア段の仮名に相当する諸音は、現代の仮名の発音と同じくaの母音で終り、イ段ウ段エ段オ段の仮名にあたる諸音も同様にそれぞれ<i><u><e><o>の母音で終ったものと考えられる。次に当時の二つの音が、後世の仮名の一つに相当するものの中、「え」にあたる「愛」の音と「延」
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