の、141−9]〕であるが、方言にはセをすべてsheと発音するものもある。この音を写した種々の万葉仮名の支那古代音もtsで初まるものや、chで初まるものや、sで初まるもの、shで初まるものなどあって、一定しない。それ故、或る人はtsであったとし、或る人はchであったとし、またs或るはshであったと説くものもある。極めて古くは最初にt音があったかとおもわれるが、奈良朝時代にもそうであったかどうか、決定しがたい。或るはshで初まる音であったかも知れない。
 ハ行の子音は、現代ではhであるが、方言によってはFであって「は」「ひ」「へ」をファフィフェと発音するところがある。更に西南諸島の方言では、p音になっているところがある(「花」をパナ、舟をプニなど)。ハ行の仮名にあたる音を写した万葉仮名の古代漢字音を見るに、皆<p><ph><f>などで初まる音であって、h音で初まるものはない故、古代においては今日の発音とは異なり、今日の方言に見るようなpまたはFの音であったと考えられる。音変化として見れば、pからFに変ずるのが普通であって、その逆は考え難いから、ハ行の子音はp→Fと変化したものと思われるが
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