、それらの仮名の現代の発音と同じく、それぞれk t n m y r wのような子音で初まる音であったろうと思われる。ただし、タ行の仮名の中、「ち」「つ」にあたるものは、現代の東京・京都等の発音とは異なり、「ち」は現代のようなチ(chi、chはチャチョなどの子音で、分解すれば、タの最初の子音tとシの最初の子音shとの合したもの。音声記号では〔t※[#「※」は発音記号。「s」を縦に長くした形のもの、141−3]〕)ではなくして、ti(英語・独逸《ドイツ》語などの発音。仮名ではティ)であり、また「つ」は現代語のようなツ(tsu、tsはタ行の子音tと、サソなどの子音sとの合したもの)でなくしてtu(独逸語などの発音。仮名ではトゥ)であったと考えられる。またヤ行には、前に述べた「延」の音(ye)が加わり、ワ行には、現代語にない「ゐ」「ゑ」「を」にあたる音(<wi><we><wo>)があったのである。
 サ行の仮名にあたる音の子音は、決定に困難である。現代語においてはサスセソの子音はsであり、シだけはsh(シャシュ等の子音と同じもの。音声記号では〔※[#「※」は発音記号。「s」を縦に長くした形のも
前へ 次へ
全70ページ中21ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
橋本 進吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング