閧ワす。「ユ」も「ヨ」も今と同じであります。違うのは「エ」が多いだけで、その発音は「イェ」(ye)であります。ワ行は、「ヰ」(wi)「ヱ」(we)「ヲ」(wo)の三つだけが今よりも多いのであります。タ行の音は「チ」「ツ」が今と違っていると思います。「チ」はti、「ツ」はtuであると思います。その濁音も、「ヂ」はdi、「ヅ」はduであったと思われます。ハ行の音は、これは明らかに今日のような「ハ、ヒ、フ、へ、ホ」でなかったのであります。今日のハヒフヘホのような音は古くから支那にあって、今でも支那および朝鮮の漢字音にそのまま残っております。例えば「上海《シャンハイ》」の「海」はhai、「漢口《ハンカオ》」の漢はhanで、大体日本の現代のハの音と同じです。かような音が古く日本へはいって来た時、もし今日のような「ハ」の音が日本にあったなら、これをそのままハと発音して、「は」にあたる仮名で書いたでしょうに、これをカの音にかえて、「海」をカイ、「漢」をカンと読み、今日まで、その音で伝わっております。そういう点から見ると、古代には、今日のハヒフヘホのような音はなかったことがわかります。それでは今日のハ
前へ 次へ
全124ページ中95ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
橋本 進吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング