塔<梶vといったろうと思います。でありますから「天地の詞」の四十八とか、伊呂波歌の四十七とか、あるいはその中の同じ音を除いた四十四というものは、その当時にあったあらゆる音を代表するものではありませぬけれども、まず普通の音はそれで代表しておったと思うのであります。
 こういう風にして、音から言えば普通の短音は後になるほど段々少なくなって来た。そのほかに新しく拗音や長音が出来て「キャ」「チャ」や「コー」「ソー」などの音が新に加わりましたけれども、短音は昔よりは減って来たのであります。全体の数から言えば今の方が多いのでしょうけれども、ずっと古くからあった音は段々減って来たのであります。
 以上、奈良朝における諸音の実際の発音はどんなであったかというに、これはかなりむずかしい問題で、いろいろ考証が必要ですし、またまだわからない点も少なくありませんが、今日は時間がありませぬから今までの研究の結果だけを簡単に申しておくに止めたいと思います。
 要点だけを申しますと、ア行の音、これは純粋の「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の母音であります。ヤ行の音は「ヤ」は今と同じで、「イ」はア行の「イ」と同じことであ
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