ことと思います。龍麿の研究によると、奈良朝におけるあらゆる万葉仮名は八十五類にわかれることになるのでありますが、これにはすこし誤りがあります。先ず、龍麿が濁音の仮名で二類に分れているのは五つであるとしたのは間違いであって、これは七つにおいてそうなっているのであります。前に述べた十三の仮名の中で濁音があるのは「キ、ケ、コ、ソ、ト、ヒ、ヘ」と七つあります。これ以外に濁音になるものはありませぬが、この七つとも、濁音のものも清音と同様におのおの二類の区別があります。龍麿は「ケ」と「ソ」だけの濁音は共に二類を認めず、すべて一類にしましたが、やはりこれはそれぞれ二類に分れているものと考えます。そうすると「ケ」と「ソ」との濁音が二つふえまして総数が八十七類となります。これが奈良朝時代において互いに違った類の仮名として区別せられておったものであると私は考えているのであります。それから『古事記』では龍麿は八十八類を認めたようでありますが、龍麿は『古事記』には「チ」と「モ」とが二類に分れているとしました。その中「チ」は間違いで、「チ」は『古事記』でも一類です。また「ヒ」を三類に分れるとしたようでありますが
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