まして、その時に偶然『古言別音抄』があったものでありますから、それをソょっと見たところが、ちょうど私のやっていることと同じようなことが書いてあり、そうしてそれは『奥山路』に拠《よ》ったものであるということが書いてありましたので、改めて『奥山路』を読みまして、そうしてよく見ると、成程そうであって、右に述べたような研究であることが判ったのであります。しかし私が『奥山路』によってはじめてかような事実を知ったのでなく、独立して自身でこの事実を見出した、尠《すくな》くも或る部分だけは自分で見出したという関係からして、この書物が大変価値のあるものであることや、どんな性質のものであるかということも解りました。同時に、どういう点に欠点があるかということも判った訳であります。そこでこれはもう一度やり直さなければならぬと考え、そして段々調査も進めたのでありますが、その当時他の仕事を主としておったものですから、この方面を専門に研究しようという積りはなかったものでありますから、あまり急いで研究を進めず、今でも大部分の調査は終っておりますが、研究はまだ完結していないのであります。しかし龍麿の『奥山路』については
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