違った音によんだことはなかろうかというようなことは、研究してみなければ解らないのであります。我々がそう読むから昔でもそうだったと考えるのは、独断というよりほかありません。
 そうして見ると、古い時代の言語の音のことを考えてみるには、言語の音を写した万葉仮名(仮名や片仮名でもよろしい)によらなければならないのでありますが、仮名として用いられた文字は非常に沢山あります。万葉仮名はすべてで恐らく千以上もあるだろうと思います。それは皆一々違った音をあらわしたとは思われませんが、とにかく文字は皆違っているのですから、その中のどれだけが同じ音で、どれだけが互いに違った音であるか、そういうようなことは予め決める訳には行かない。よく研究してみなければならないのであります。
 現代においてもいわゆる変体仮名というものがあって、同じ音を色々違った文字で書くことがあります。けれども現代においては変体仮名というものは、正体《せいたい》の仮名に対するもので、「か」ならば「か」は正しい形として「※[#「※」は変体仮名、28−8]」とか「※[#「※」は変体仮名、28−8]」とかいうもの、まだ幾らもありますが、こうい
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