pいる活用は他にないかというに、ちょうど上二段活用があります。さすれば、これらの語は、上二段活用でなかったかとも考えられるのでありますが、『日本書紀』巻七景行天皇十二年の条を見ると、「乾此云レ[#「レ」は返り点]賦」とあって「乾」を「フ」と読ませてあります。さすれば「乾」は「フ」と活用したとも考えられます。また私の考えでは『万葉集』巻十一の、
  我背児爾吾恋居者吾屋戸之草佐倍思浦乾来《ワガセコニワガコヒヲレバワガヤドノクササヘオモヒウラガレニケリ》(二四六五番)
の末の句の「浦乾来」を「うらがれにけり」と読んでいるのはどうも不適当と思われるのであって、これは「うらぶれにけり」と読むのが正当と思われます。さすれば「乾」を「ふれ」の仮名に用いているということになります。かように「乾」を「フ」と読んだり「フレ」と読んだりしたとすれば、それは「ヒ」「ヒ」「フ」「フル」「フレ」と活用したもので、すなわち上二段活用の語であったと考えられます。かような考を私は『国語国文』という雑誌の創刊号(昭和六年)に書いたことがありますが、私はこの考えが正しいものと考えているのであります。なお、私が雑誌に書いた
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