瓢作り
杉田久女

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)瓢《ひさご》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一体|瓢箪《ひようたん》だらうか

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「くくり」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ポト/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 今年私は瓢《ひさご》作りを楽しみに、毎朝起きるとすぐ畠へ出てゆく。
 まづ門傍のポプラの枝へはひ登つて、ぶらりと下がつてゐる大瓢が一つ。これはまるでくくり[#「くくり」に傍点]のない、丁度貧乏徳利みたいにそこ肥りのした奴。私がこないだ虚子先生にお目にかかりに別府迄行つてきて、汗の単帯をときすてるとすぐ見に行つたら、ほんの二日の間に見違へるほど快よくまつ青く太つてゐた。あんまりのつぺりとくくりがないので一体|瓢箪《ひようたん》だらうか白瓜か、もしくは信州辺でゆふご[#「ゆふご」に傍点]と言つてゐるかんぺうを作る瓜なのか、などと家中で評定とり/″\だつたが、やはりずぼらながら瓢箪であるらしい。実
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