けり みさ子
芥子まくや風にかわきし洗ひ髪 久女
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等大正女流は髪そのものを主に詠出で、
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涼しさや髪ゆひなほす朝機嫌 りん女
日当りや白髪けづる菊の花 星布
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古の女流は、涼しさ、菊の日向の季感を濃く詠じている。
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ゆきあへばもつるる足や土手吹雪 和歌女
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(6)[#「(6)」は縦中横] 婦人の姿態をよめる句[#「婦人の姿態をよめる句」に傍点]
大正女流はその姿態を大胆に描出し、自己表現の写生句を試みている。
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ぬかるみやうつむきとりし春着褄 和歌女
病み心地の母とよりそひ林檎むく みさ子
紫陽花きるや袂くわへて起しつつ 久女
睡蓮や鬢に手あてて水鏡 同
白足袋や帯のかたさにこゞみはく みどり
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病み心地の母により添い林檎をむく乙女心或は春着の褄をとり、或は水鏡し、金繍の帯のかたさにこごみつつ足袋をはく姿。紫陽花の重いまりを起しつつきらんとする女。かかる姿態のさまざまをよめる句も、繊細な写生練習の一つの方法であった。又動作を如実によめる句は、
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手にうけて盆提灯をたゝみけり みさ子
片足づついざり草とる萩の前 汀女
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(7)[#「(7)」は縦中横] 婦人に関した材料をよめる句[#「婦人に関した材料をよめる句」に傍点]
婦人にとって一番親しみぶかい着物の句は古今共頗る多い。元禄の園女は、中将姫の蓮のまんだらを見て、みずから織らぬ更衣を罪ふかしと感じ、或は衣更てはや膝に酒をこぼしけりと佗びしがり、時には汗や埃に汚れた旅衣を花の前に恥かしく思うと詠み、千代女は、「我裾の鳥もあそぶやきそはじめ」と我着物に愛着を感じ、玉藻集には
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風流やうらに絵をかく衣更 久女(大阪)
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と風流がり、或は「風ながら衣にそめたき柳かな 芳樹」など伝統的な感じを女らしくよみ出ている。さて大正女流は、
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くずれ座す汝がまわりの春の帯 なみ女
花衣ずりおちたまる柱かな 和香女
花衣ぬぐやまつはる紐いろ/\ 久女
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