かけ、柳眉をあげている、おきゃんな女性。女であるため[#「女であるため」に傍点]に二言目には「女なんか[#「女なんか」に傍点]」と侮られ、軽く扱われるのは昔も今も変りはない。しかし簪の心境は別として此句は、花の風[#「花の風」に傍点]が比喩の様にもきこえ、又主観もろこつ過ぎて何等詩的な感興をひき起こさない。すて女の逢坂の関吹きもどせもほんの興味丈の浅い句風の様私は思う。

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花の風なげひろげたる筵かな  ひろ女
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 同じ花の風乍らこの近代句は、主観を弄さずただ光景を写生している。花かげに投げひろげた花見筵にも大地にもたまたま颯と花の風が吹きおろせば花片は吹雪の如く一しきりそこら一面をましろくなす。時には小つむじが起って落花をしきりにうずまき移るという様な光景である。昔の二句と比較してこの句の方が遙かに花の風というものを如実にうつし出している。

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夜嵐や太閤様のさくら狩  その女
ちぎれおつ牡丹桜の風雨かな  沼菽女
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 閨中の美女をあつめて豪華をつくした太閤の桜狩も、花の盛りも一夜の嵐にむ
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