静物
十一谷義三郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)喙《くちばし》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一層|拘泥《こうでい》し初めた

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》つた

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)細々《こま/\》と
−−

     一

 家を持つて間のない道助夫妻が何かしら退屈を感じ出して、小犬でも飼つて見たらなどと考へてる頃だつた、遠野がお祝ひにと云つて喙《くちばし》の紅い小鳥を使ひの者に持たせて寄来《よこ》してくれた。道助はその籠を縁先に吊しながら、此の友人のことをまだ一度も妻に話してなかつたのを思ひ出した。
「古くからの親友なんだ、好い人だよ。」と彼は妻に云つた。
「では一度お招《よ》びしたらどう。」と彼女が答へた。道助はすぐに同意した。彼女はその折りに食卓に並べる珈琲《コーヒー》茶碗や小皿のことなどに就て細々《こま/\》
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