の上でその豊満な身体を弛《ゆる》やかに揺《ゆ》すり初めた。
遠野は彼女のするがまゝになりながら、立て続けに洋盃を乾した、彼の眸《ひとみ》や唇に、時々ちら/\と何かが燃え上る、それを隠さうとするかのやうに、彼は細長い指を伸べて食卓の端を叩きながら低く唱ひ始めた……
その様子を見ると道助は少し堪へられなくなつて密《そ》つと椅子を離れた。そして先刻彼女が抛《はふ》り出した花束を拾ひ上げて、殆ど無意識にその花片《はなびら》を一つ/\むしり初めた。
「おいとみ子、一つダンスをやらう。」さう云つて遠野が不意に彼女の首筋を抱へて飛び上つた。
「ほら始まつた。」と云ひながらとみ子はちらと道助の方を見た。
「あゝ君は一つ囃子方《はやしかた》になり給へ。」遠野が道助に云つた。道助は漠然と微笑《ほゝゑ》みながらバネの弛《ゆる》んだ自働人形のやうに部屋の中を歩き廻つた。
恰度《ちやうど》部屋の真中へ天窓から強烈な光線が落ちてゐる。その中へ遠野ととみ子とは白い両手を握り合つてふら/\と立ち上つた。
「ほんとに踊る気かい、君達は。」と道助が訊ねた。それを聞くととみ子が崩れるやうに笑つた。
「踊《をどつ》たつ
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