旅日記
東海道線
二葉亭四迷

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)国府津《こふず》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]忙と

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ポツ/\
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 社命を畏こまつて雲の彼方の露都を志し六月十二日雨持つ空の何となく湿つぽい夕弱妻幼児親戚の誰彼、さては新知旧識のなつかしき人々に見送られ新橋より大阪行の客となる。二十年来の知己横山天涯君統計好きの乾びた頭にも露の情けの湿はあつて同車して国府津《こふず》まで見送られお蔭で退屈を免れたのは嬉しかつたが、国府津からは全くの一人となつてとうとう雨さへポツ/\降つて来た。隣席に一露人の観光の為来朝して今浦塩へ帰るといふのが有つたから、それから此人と話し/\行く。狙撃聯隊の中尉とかとて名をチョールヌイ君といふさう。チョールヌイとは黒いの義、随分異つた名もあればあるものだ。山北で意地汚なしの本性を顕して給仕に命
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