余が言文一致の由來
二葉亭四迷

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)一伍一什《いちぶしじふ》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き](明治三十九年五月「文章世界」所載)

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)遂《と》う/\
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 言文一致に就いての意見、と、そんな大した研究はまだしてないから、寧ろ一つ懺悔話をしよう。それは、自分が初めて言文一致を書いた由來――も凄まじいが、つまり、文章が書けないから始まつたといふ一伍一什《いちぶしじふ》の顛末さ。
 もう何年ばかりになるか知らん、余程前のことだ。何か一つ書いて見たいとは思つたが、元來の文章下手で皆目方角が分らぬ。そこで、坪内先生の許へ行つて、何うしたらよからうかと話して見ると、君は圓朝の落語を知つてゐよう、あの圓朝の落語通りに書いて見たら何うかといふ。
 で、仰せの儘にやつて見た。所が自分は東京者であるからいふ迄もなく東京辯だ。即ち東京辯の作物が一つ出來た譯だ。早速、先生の許へ持つて行くと、篤と目を通して居られたが、忽ち礑《はた》と
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