ネどいうのは一つもない、又楽んでいる暇《ひま》もない。後から後からと他の学科が急立《せきた》てるから、狼狽《あわ》てて片端《かたはし》から及第のお呪《まじな》いの御符《ごふう》の積《つもり》で鵜呑《うのみ》にして、而《そう》して試験が済むと、直ぐ吐出してケロリと忘れて了う。

          二十二

 今になって考えて見ると、無意味だった。何の為に学校へ通ったのかと聞かれれば、試験の為にというより外はない。全く其頃の私の眼中には試験の外に何物も無《なか》った。試験の為に勉強し、試験の成績に一喜一憂し、如何《どん》な事でも試験に関係の無い事なら、如何《どう》なとなれと余処に見て、生命の殆ど全部を挙げて試験の上に繋《か》けていたから、若し其頃の私の生涯から試験というものを取去ったら、跡は他愛《たわい》のない烟《けむ》のような物になって了う。
 これは、しかし、私ばかりというではなかった。級友という級友が皆然うで、平生《へいぜい》の勉強家は勿論、金箔附《きんぱくつき》の不勉強家も、試験の時だけは、言合せたように、一|色《しき》に血眼《ちまなこ》になって……鵜の真似をやる、丸呑《まるのみ
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