ニして一|如《にょ》となる。
一|如《にょ》となる。だから、今でも時々私は犬と一緒になって此様《こん》な事を思う、ああ、儘になるなら人間の面《つら》の見えぬ処へ行って、飯を食って生きてたいと。
犬も屹度《きっと》然う思うに違いないと思う。
十四
私は生来の朝寝坊だから、毎朝二度三度|覚《おこ》されても、中々起きない。優しくしていては際限がないので、母が最終《しまい》には夜着を剥《は》ぐ。これで流石《さすが》の朝寝坊も不承々々に床を離れるが、しかし大不平《だいふへい》だ。額で母を睨《にら》めて、津蟹《づがに》が泡を吐くように、沸々《ぶつぶつ》言っている。ポチは朝起だから、もう其時分には疾《とッ》くに朝飯《あさめし》も済んで、一切《ひとッき》り遊んだ所だが、私の声を聴き付けると、何処に居ても一目散に飛んで来る。
これで私の機嫌も直る。急に現金に莞爾々々《にこにこ》となって、急いで庭へ降りる所を、ポチが透《すか》さず泥足で飛付く。細い人参程の赤ちゃけた尻尾を懸命に掉《ふ》り立って、嬉しそうに面《かお》を瞻上《みあげ》る。視下す。目と目と直《ぴっ》たりと合う。堪
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