髓の上に凭《もた》れ懸って、「如何《どう》するのさ?」と、私の面《かお》を見て笑っている……其時思い掛けず「親が大病だのに……」という事が、鳥影《とりかげ》のように私の頭を掠《かす》めると、急に何とも言えぬ厭な心持になって、私は胸の痛むように顔を顰《ひそ》めたけれど、影になって居たから分らなかったのだろう、お糸さんは執《と》られた手を窃《そっ》と離して、「貴方《あなた》は今夜は余程《よっぽど》如何《どう》かしてらッしゃるよ」と笑っていたが、私が何時迄経《いつまでた》っても眼を瞑《ねむ》っているので、「本当《ほんと》にお眠いのにお邪魔ですわねえ。どれ、もう行って寐ましょう。お休みなさいまし」と、会釈して起上《たちあが》った様子で、「灯火《あかり》を消してきますよ」という声と共に、ふッと火を吹く息の音がした。と、何物か私の面《かお》の上に覆《かぶ》さったようで、暖かな息が微かに頬に触れ、「憎らしいよ!」と笑を含んだ小声が耳元でするより早く、夜着の上に投出していた二の腕を痛《したた》か抓《つね》られた時、私はクラクラとして前後を忘れ、人間の道義|畢竟《ひっきょう》何物ぞと、嗚呼《ああ》父は
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