フ半額金五円也を呈して、不覚《つい》又敬意を表して了った。
五十八
お糸さんに敬意を表して見ると、もう半端《はんぱ》になったから、国への送金は見合せていると、母から催促の手紙が来た。其中《そのうち》に何だか父の加減が悪くて医者に掛っているとかで、物入が多くて困るとかいうような事も書いてあったが、例の愚痴《ぐち》だと思って、其内に都合して送ると返事を出して置いた。其時は真《しん》に其積りで強《あなが》ち気休めではなかったのだが、彼此《かれこれ》取紛《とりまぎ》れて不覚《つい》其儘になっている一方では、五円の金は半襟二掛より効能《ききめ》があって、夫《それ》以来お糸さんが非常に優待して呉れるが嬉しい。追々|馴染《なじみ》も重なって常談《じょうだん》の一つも言うようになる。もう少しで如何《どう》にかなりそうに思えるけれど、何時迄《いつまで》経《た》っても如何《どう》にもならんので、少し焦《じ》れ出して、又欲しそうな物を買って遣《や》ったり、連出《つれだ》して甘《うま》い物を食べさせたり、種々《いろいろ》してみたが、矢張《やっぱり》同じ事で手が出せない。お糸さんという
前へ
次へ
全207ページ中191ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
二葉亭 四迷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング